近年の情報技術の革新とともに、IT 投資に対する話題を耳にする機会が増えたと思います。
IT投資には、業務効率化やコスト削減、安定稼働・セキュリティ体制などを目的とした『守り』のIT投資と、最新技術を用いた新ビジネスの提案やIT活用によるサービス開発強化などを目的とした『攻め』のIT投資があり、特に最近では後者の動向に注目が集まっています。
IT投資に必要な額とは
ではIT 投資について、一体どのくらいの費用をかければ良いのでしょうか。一般社団法人日本情報システム・ユーザ協会(JUAS)『企業IT 動向調査2016』によると売上高に対するIT 予算比率は2014 年1.11%、2015 年1.21%で微増傾向でした。業界や規模によって差は大きく、最大は金融業界のIT 予算は7.82%となっています。現在ではクラウドの認知拡大やDX(デジタルトランスフォーメーション)の対策も含め、増加傾向にあると想定されます。
一方で欧米では売上高に対するIT 投資額比率が日本企業の約3~4 倍とも言われていますが、一概にIT 投資に多く費やせばよいというものではありません。逆に日本の平均程度あれば問題ないということもありません。
自社に合った適正な投資を行うこと、必要なものに確実に投資をすることが求められるのです。
適正なIT投資を行うためには
どの企業も「自社特有」だったり「業界特有」というものがあると思います。自社の業界が特殊だと思ってシステム全体を特殊なものにしようとするケースが多く存在しますが、結果的に全てを作り替えなければならないので莫大な初期費用がかかります。ベンダーがその企業や全ての業界に精通しているわけではないので結果的に出来上がったものが何か違う、ということも起こり得ます。
自社に合った適正な投資を行うことは、自社の状況を正確に詳細にベンダーに伝えることが不可欠なのです。
業務効率の向上で費用が8分の1に圧縮できることも
例えば、このようなケースもあります。
自社は特殊な業界にいるので大手ベンダーに依頼して、システム全体を何億円もかけて大規模にした。
逆にデータ入力オペレーター(キーパンチャー)が大量に必要となり効率も悪くなってしまった。
改めて別のベンダー(小規模)に相談したところ、業務プロセスを全て見直した上で特殊な部分とそうでない部分の切り出しを行い、パッケージをそのままにして小さなシステムをいくつか作って連携させた。
結果的に業務効率が以前より上がり、費用も8分の1程度で済んだ。
特殊だと思って特殊なシステムにしてしまうと前にも進めず、費用も莫大になってしまいます。上記のケースの場合は最終的に理想の状態になりましたが、始めに支払った費用は返ってきません。大手企業であれば絶対に大丈夫ということはありませんし、もちろん中小企業だったら必ず寄り添ってくれるというわけでもありません。
重要なのは信頼できるベンダーを見つけて適正な投資を行うことなのです。
目標を定め、着実に体制を構築する
昨今の新型ウイルス対策としてテレワーク・リモートワークといった対応が話題になっていますが、ビデオ会議ツールを入れたが上手く利用できないという声も多く伺います。
上手く利用できないという場合に多いのが、今まであまり考えていなかった事を、突然ツールだけ導入して失敗する、というパターンです。下手にいきなり始めようとすると、便利なはずのツールが逆に足枷となって上手くいかない方向に加速させてしまうのです。ではどのようにすれば良いのでしょうか。
それは、BCP(事業継続計画)対策も含めて目標を定め、着実にIT体制を構築するということです。例えば前述のリモートワークの点で言うと、リモートワークを行うためには社外環境の整備や通信費の負担、セキュリティと従業員へのIT教育、さらにはリモートワーク社員をどう評価するのかという事も求められます。働いている時間、つまり時給やパソコンを触っている風景で社員の評価を判断するようであればPCの映像を常に付けっぱなしにしておけば良いですが、それは間違いでしょう。大切なのは社員からどういうアウトプット(成果物)が出ているか、を判断することです。つまり、リモートワークを行わせる環境を作る事が目標なのではなく、リモートワーク中でもきちんとコミュニケーションが取れて、評価者が成果物で判断できる能力を身に着けて初めて成功するのです。
このようにIT投資の目標を深く落とし込んで体制構築すること、また構築前にそういった目標設定や人材教育を含めたアドバイスをきちんとしてくれるベンダーやパートナーを見つける事が重要になります。
必要なものに確実に投資を行うためには
必要なものに確実に投資を行うためには次の3点が重要です。
- 自社の業務プロセスを細かく把握し、どの部分が特殊でどの部分は定型業務なのかを切り分ける
- 一度に全てを変えようとせず、切り分けた部分を少しずつ変えていく
- 信頼できるベンダーに正確な情報を伝える、ベンダーに任せっきりにしない
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